日航機の墜落時のボイスレコーダ

心に残る新聞記事

今から38年前つまり1985年8月12日、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落し、520人の乗客と乗務員の尊い命が犠牲になりました。

悲劇的な事件ですが、絶望的な状況の中でも最後まで諦めずに職務を遂行する乗務員のボイスレコーダーが残っているので当時の新聞記事より転載します。

 日航ボーイング747JA8119は、12日午後6時12分、乗客、乗員計524人を乗せ東京発大阪行きとして羽田空港を離陸、同24分29秒までは正常に飛行していた。当時、高度7,200メートルで飛行中、伊豆半島南部の東岸上空で同24分30秒ごろ、異常な衝撃が発生。直後に油圧が急激に低下、方向舵、操縦系統も異常となり、午後6時56分26秒御巣鷹山に墜落した。

 異常が発生してから墜落までの間、約30分間のボイスレコーダーが公表されているが以下の通りです〔分・秒の時間表示はボイスレコーダが働き始めた時間経過をあらわす 1985(S60)/08/20 朝日新聞より、その他の新聞の同じ報道をしていましたが。〕。

 この30分間の航路は、伊豆半島下田上空→静岡県焼津→富士山→東京都青梅→埼玉県西方25マイル→御巣鷹山です。羽田を離陸して御巣鷹山に墜落するまでの航路図を次のとおりです。

01分05秒  ライトターン=右旋回(機長)・・・・・

・・・・・なんだよこれ(機長)・・・・・

・・・ハイドロブレッシャー=油圧が落ちていますね、ハイドロが(・・・・)・・・・・

02分17秒  ハイドロ全部だめ(機長)

・・・・・

02分37秒  ライトターン(機長) ライトターン(副操縦士)

・・・・・

03分38秒  ハイドロプレッシャー オールロック(・・・・)

・・・・・

05分51秒  なんだよこれ(機長)

・・・・・

07分36秒  ・・・・・

後ろのほうですか、えーとなにがこわれていますか どこですか、あーあーあーあ 荷物の収納室のところですね、後ろのほうの一番後ろのほうですね、はいわかりました

あのですね、荷物室に入れてある収納室の一般のですね、落っこちてますね。これは降りた方がいいと思います(副操縦士 あるいは、航空機関士)

・・・・・

・・・・・

09分20秒    R5(ドア)の窓ですか、はい 了解しました、キャプテン R5の・・・・やったほうがいいと思います、マスクわれわれもかけますか、かけてやったほうがいいと思います。

緊急マスクはできたら吸った方がいいと思いますけど(・・・・)

11分33秒  R5のドアブロークン=破壊=しましてディセント=降下=しております(・・・・)

・・・・・

13分31秒  頭を下げて(機長)はい(副操縦士)

・・・・・・

14分33秒  ギアダウン=脚下げ=したらどうですか(・・・・)

・・・・・・

14分56秒  頭を下げろ(機長)はい(副操縦士)

・・・・・

16分25秒  ギアダウンしました(副操縦士)はい(機長)

・・・・・

20分54秒  フラップをどうしましょうか、下げましょうか、まだはやいですか(副操縦士)まだはやい(機長)

・・・・・ギアおりているか(機長)ギアはおりてます(副操縦士)

・・・・・

23分57秒  ライトターン(機長)おこせ(機長)

・・・・・

・・・・・アップパワー(機長)アップパアー(副操縦士)

24分18秒  今度はレフトターン=左旋回(機長)はい(副操縦士)

・・・・

・・・・レフトターン

・・・・

24分27秒  パワーちょっとしぼって(機長)

・・・・・

・・・・・頭下げろ(機長)

・・・・・頭下げろ(機長)

25分11秒  パワー(機長)

25分54秒  おい アップパワー(機長)アップパワー(副操縦士)

・・・・

27分46秒  ハイパワー(機長)パワーふかします(副操縦士)

・・・・・

29分29秒  パワー上げろ(機長)はい(副操縦士)パワー(機長)はい(副操縦士)

・・・・

30分21秒  レフトターン(機長)レフトターン(機長)

・・・・・

31分03秒  頭下げろ(機長)

・・・・・熊谷から25マイルだそうです(航空機関士)

・・・・・

・・・・・頭を上げろ(機長)

・・・・・

・・・・・頭を上げろ(機長)

・・・・・

31分37秒  頭あげろ(機長)

・・・・・

32分02秒  パワー、パワー(機長)

・・・・

・・・・頭上げろ(機長)

・・・・頭上げろ(機長)

・・・・上げろ(機長)

32分32秒  (対地接近警報装置の人工合成音による発声で)

”シンクレト”=降下率注意=”プルアップ”=引き起こせ=”プルアップ””プルアップ””プルアップ””プルアップ”

32分41秒  「接触音」

 この事故は今から、38年前の事故ですが、当時はジャンボジェット機に500名以上が一度に乗っていました。死亡520人、助かったのはそのうち4名ということです。犠牲者の多さがショックでした。それでも助かった人がいるというのが救いでした。事故原因は「後部与圧隔壁の破裂による瞬間的減圧」と言われています。まさかこんな事故がと全国民が衝撃を受けました。

 ボイスレコーダには、機長、副操縦士、航空機関士など乗員が必死に機体を立て直そうとしている状況が分かります。でも、最後の方では墜落を免れないことは分かったはずです。それでも、「パワー パワー 頭を上げろ 頭をあげろ」「引き起こせ 引き起こせ」と機長が指示しているのは、少しでも墜落の衝撃を少なくさせるためだったかも知れません。現に4人は助かりました。

 乗客室のアッテンダント(当時はスチュアーデスといっていました。)の最後の乗客に対する呼びかけは、「・・・もうすぐ・・・赤ちゃんを連れている方は、座席の背に頭をささえて、・・・赤ちゃんはしっかり抱いて下さい。ベルトはしてますか。テーブルはもどしてありますか」でした。

名古屋弁護士 伊神喜弘

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